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2019.04.05

データが語る日本財政の未来

経営に関する話題

 明石順平さんという弁護士が書いた「データが語る日本財政の未来」を読みました。この著者は「アベノミクスによろしく」という本の著者としても有名な人です。日本の財政についてとても冷静な目で分析し、わかりやすく書いているとても良い本です。

 日本の財政が世界でも突出した赤字を抱えていることは多くの人が知っています。2016年のデータで対GDP比率235.6%%というのは、第2位のギリシアでも183.5%ですから日本政府は大きな借金を抱えています。この財政赤字について多くの経済学者や政治家は「日本は世界一の対外債権国だから大丈夫だ」とか、「日本国債のほとんどは日本人が買っているから大丈夫」という話をします。

 しかし、本当に日本が対外債権を多く抱えているから政府が借金を多く抱えていても問題ないのでしょうか?ある経済学者はこんなことを言っています。日本の財政問題は、夫が多額の借金を抱えていても妻に多額の預金があるのと同じなのだと。
 日本政府が借金だらけでも、民間企業が財産を持っていれば問題ないというのは、日本政府と日本全体を混同しています。いくら国民や民間企業がお金持ちでも、その国民や民間企業から税金を徴収しない限り政府の借金は返せません。民間企業は政府の配偶者ではないのですから、政府が借金で首が回らなくなったからといっても、法律で没収でもしない限り民間資金を借金返済に充てることはできません。

 経済成長さえすれば、いくら借金が膨大に膨れ上がっても問題ないという主張をする学者もいます。この説には一理ありますが、問題は日本の経済成する可能性です。日本の人口はまさにこれから急速に減少していきます。そして高齢者が増加し、生産年齢人口が急激に減少していきます。このような条件の中で一人当たりの生産性をより急激に高めていく戦略でもあれば別ですが、その具体的戦略について語る人はいません。
 普通に考えて、日本がかつての高度経済成長を実現することは困難です。反対に現在より将来の方がより多くの高齢者を抱えるわけですから、社会保障費は増大します。生産年齢人口がまだ多い現在こそ、将来の負担増加に備えて財政の健全化の努力をなすべきです。政府の経営も企業の経営と同じです。将来投資のために借金するのであればいいのですが、現在の日本政府は借金返済資金と運転資金のために借金を繰り返しています。
 建設国債であれば、その借金によって建設されたインフラを将来利用する人たちが返済するということですから、将来の納税者も納得感もありますが、60年前の社会保障費や政府の運転資金のために使われた借金の返済を将来の納税者が納得するのでしょうか?

 黒田日銀総裁の「大胆な金融政策」は、究極の現実逃避であり、大量の国債や株を日銀が買い支えて円安と株高は実現しましたが、この先どうするのでしょうか?
 企業経営であれば、経営者は必要以上の借金はしません。今の政治家を見ていると経営に責任を持たないサラリーマン経営者が、勇ましいことを言って、非現実的な経営を行っている姿に映ります。

 経営とは人のために尽くすことである。そのためには、現実逃避せずに将来について責任を持つことである。
 そう思います。

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