2021.11.05
衰亡のメカニズム
講談社から講談社学術文庫として出版されている「興亡の世界史」ですが、全部で21巻もあるのですが、そのなかにはとても面白い本があります。今回紹介する「人類文明の黎明と暮れ方」は、このシリーズの中でも出色の面白さです。
この本は、人類の誕生から世界の各地で興りそして滅びていった世界各地の文明を取り上げています。そしてどんなに栄えた文明も、いつか衰亡の時を迎え、衰亡して滅亡していきます。最盛期にその場所にいるその文明の当事者は、きっとこの隆盛は永遠に続いていくように感じているのかもしれませんが、どんな文明も例外なく衰亡しました。
著者の青柳正規氏(東京大学教授、文化庁教授などを歴任)は「いくつかの文明の興亡をたどると、その文明を繁栄させた原因や要素こそが、同じ文明を衰退させる働きをすることがわかる」と述べています。「繁栄はある臨界点まで達すると、衰亡に転じる。ローマ帝国の場合、その分岐点はトライアヌス帝(在位98-117)とハドリアヌス帝(在位117-138)のころにあたる。トライヤヌスが皇帝についたとき、ローマ帝国はもう十分に拡大していたにもかかわらず、さらなる拡大を目指して、現在のルーマニア、さらにイラクあたりまで占領した。この拡大版図を引き継いだハドリアヌスは、その広大な領土に振り回されることになる。…(略)…結局、ハドリアヌスは拡大から内政重視に切り替えるが、次第に異民族のコントロールがきかなくなる。」ということなのです。
アフガニスタンから撤退したアメリカはまさにそんな段階なのかなと思えます。中国が「一帯一路」戦略を推進していますが、中国帝国の拡大路線は必ずその滅亡の原因になるのだろうと思えます。
人生も大きな目で見ると膨張と緊縮の繰り返しかもしれません。成功におごれるものは必ずその成功した要因によって臨界点に達し、衰退の道に入ります。
衆議院選挙が行われたばかりですが、各党の候補者の声を聴いていて、私は「日本の衰亡」を感じることしかできませんでした。というのも自民党も野党も相変わらず「成長」か「分配」しか話していません。もはや日本経済は成長の臨界点に達したにもかかわらず、これ以上の「成長」を追究し続ければ、必ず歪みが大きくなるのは当然です。そして赤字国債をじゃんじゃん発行して「分配」というのも、MMT理論に誑かされているとしか思えません。
すでに資本主義経済は、人類に食べきれないほどの食料と着飾れないほどの衣服と、空室だらけの巨大建物を世界中につくりました。世界中で作られた食料の30%以上が捨てられているのですが、そのうちの10%があれば世界中の飢餓者8億人にたらふく食べさせることができます。もう衣服も住居も車も捨てるほどあり、地球の大切な資源を浪費して作った生産物を大量に捨てています。世界じゅうの海に毎分トラック一杯分のプラスチックが捨てられているため、あと数年で魚の量よりもプラスチックの方が多くなるようです。
もはや「大量生産・大量消費」というモデルは、これ以上追求したら、人類が滅びてしまいかねないのに、まだ「成長」を追求して大量生産するのでしょうか?現在のテクノロジーとインフラをうまく使えば、生産を抑え、リサイクル率を高め、飢餓のない社会がつがつ働いたりライバルを蹴落としたりしなくていい社会は建設可能なのだと思います。
「テクノロジーをお金のためではなく幸せのために使う」べきですよね。