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2023.03.29

韓国に抜かれる日?

経営に関する話題

 日本と韓国の一人当たりGDPが接近しています。2022年10月にIMF(国際通貨基金)が発表したデータによると、2021年における一人当たりGDPは、日本が39,301ドルで世界第27位、韓国は35,004ドルで世界第29位です。
 1990年におけるひとりあたりGDPは、日本の25,896ドル(世界第8位)に対し、韓国6,610ドル(世界第43位)ですから、この30年間で日本の1/4でしかなかった韓国の一人当たりGDPは、日本の9/10にまで接近したことになります。
 この30年間の日本経済の停滞については、「少子高齢化」とか「産業の空洞化」とか様々なことが言われてきましたが、韓国社会の少子高齢化の進展は日本以上に深刻(2020年における出生率は日本が1.34%に対し韓国は0.84%)なのですから、少子高齢化だけを経済停滞の言い訳にすることはできません。

 2005年に没したピーター・ドラッカーの最後の著作となった「ドラッカーの遺言」(講談社)の中で、「日本の危機」について以下のように語っています。

 「失われた10年」という言葉に代表されるように、この十数年間、「日本が危機状況に瀕している」という言われ方が幾度となく繰り返されてきました。……明らかな間違いです。
 日本が直面しているのは危機ではなく、時代の変わり目=移行期だからです。
 日本が今すぐ取り組まなければならない課題……それは時代が変わったことを認め、その変化に対応していくための意識改革です。

 一つ目の変化は、日本を成功に導いてきた原動力である「保護主義」が通用しなくなったことです。情報がグローバル化し、トランスナショナルな経済の勃興で一国内の金融政策が無力化したために保護主義は息の根を止められました。
 この保護主義が通用しなくなったにもかかわらず、この30年間日本の政治家は「経済危機に対して手厚い保護」を繰り返してきました。
二つ目の変化は、「労働市場で進行しつつある変化」です。ブルーカラーが担ってきた労働集約的な仕事の比重が軽くなり、ホワイトカラーが中心の知識労働の比重が高まったことです。この変化に対する対応が遅れていること。

 つまり、日本が直面している問題は、「経済の停滞」ではなく、「情報技術の分野でひどく立ち遅れてしまっている」点にある
のです。

今から18年も前にドラッカーが指摘したことなのですが、多くの日本人は「変化から逃げ、変化を拒絶してきた」のではないでしょうか?
それに対し韓国は、少なくとも変化を認め、「情報技術の分野」で先端を行くように努力してきたという違いがあるように思えます。

「経営とは『成果』を求めて行うもの、決して『権力』を求めて行うものではない」というドラッカーの言葉に、日本人は真摯に向き合うべきなのだと思います。日本人の多くが「韓国に負けるはずがない」、「日本の方が優れている」と情報技術の遅れを認めようとしないのは、「変化から逃げている」ということに他ならないのだと思う。

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